Some people compare the moon to…

わたしはよく月をチェダーチーズにたとえる。

低い空に判を打ったように輪郭がくっきりと、

黄金色が濃い味のチーズのようで

 

時には、夜空がこの世界をドーム状に覆う天井で、

白く発光する月が、ドームの外への扉のように思えることもある。

それは大体月が一番高いところにあがっているとき。

 

 

 母。

顔がそっくりだとよく言われてきたけれど、

服とか、本とか、映画とか、好みがずれていることが多い。

変わったことしない方がいいとか、そういうところも。

 

この前の満月を一緒に見ていた母が、唐突に

「真ん中みたい」と言った。

「花火の。線香花火の。」

 

斜め下を向いた顔がそっくりだと自分でも思ったことがある。

やっぱり思考の根っこは似ている気もしている。

否応なしに母に似ていることをひとつひとつ確認していくような日々

それは、母はこういう人だというのが自分の中にあって、

それと似ているかどうかを重ね合わせていく過程

 

それと逆のことが起きた。

月を何かにたとえて遊ぶのを、母もするなんて

母の中に、自分と似ているところを見つけた。

 

思えば、実家を出て過ごし、色々な大人の例をみたことで、家族をみる目というのはすこし変わっていたのだ。

たまに帰れば、すこし客観的な気持ちで家族のことをみていたりする。そして、その中にある自分のことも。

目に映っているのにも気づかなかった、「家族はそれぞれ、”人”の中でもこういう人なんだ」というのを見つける過程でもあった。

 

親子の縁からはじまり、人間同士としても、このひとのことを理解しようとして、改めて傍に居直す。

これから、これをしていくのだ。

 

 

「満月が線香花火の真ん中みたい」と言われて、

わたしは「いいね」と返した。

母を、かけがえのない人だと強く感じた。