まほろばをもとめて(2020)
まほろばって、「素晴らしい場所」って意味だって。
無名で始めたけれど、たしか11月頃にアカウント名を考えよっかな、と思い立って、この言葉と出合った。
このブログを始めたり、SNSに趣味アカをつくったり、今年は色々はじめてみた。それもこれも、まさに、私にとってのまほろばを求めてのこと。
そんなアカウントの趣旨にぴったりだなと思って、あとは「ほろば」っていう語感がかわいくて、お借りしている。
2020年中頃、このままじゃ息が詰まりそう…と膨れ上がった風船のような時期があった。自分のリアリティを離れたところに安全で居心地のよい場所を持ちたい、と思って匿名の世界へ踏み出し、まほろばを探し回った。
これがスタートでした。
次の年は始まってしまったのですが、2020年をすこしだけふりかえって、書き留めておこうかなと思います。
匿名の世界では好きなものを好きと示すのはたやすくて、現実より簡単に同じものを好きな人とつながったりもできた。
NHKの100分de名著12月のブルデュー『ディスタンクシオン』の回にて、
「好きなものを好きと言うのは、一つの生き方を示すこと」という話があった。
”「お前、そんなのが好きなの?」と言われた時の、存在まで否定されている感”
伊集院さんのコメントに、切実に同意した。
現実ではこれが過酷な闘争になったりするが、匿名の世界では”匿名の世界だしな”ということで気楽に参戦できる。
とはいえ、投稿されたものから、知人に「これって…」って発覚することをめちゃめちゃ恐れたりもしている。
それでも、安全な場を得て、自分の好きなものに関する発信ができることは、本当に心を明るく軽やかにしてくれた。
それに、(たいしたことないことでも)自分というフィルターを通して何かを発信することに、前向きになれたのもとても大きな変化だ。
この転換点をもたらしてくれたのは、やっぱり斉藤壮馬さんを知ったことだと思う。
あぁやっぱりこの方の発信するものが好きだなぁと思う瞬間が何度もあった。
そして、その内容だけでなく、それを語るための言葉をたくさんもっていることが本当にすごいと思う。
100分de名著『ディスタンクシオン』にて、
「人が趣味について語るとき、界の中での位置を語っている」という話があった。
例えば、好きな映画監督はについて、映画界でどのジャンルで、どの系譜にあって、どういった点で他とは違って、”だから好きなのだ”ということを他の人に示している。
はじめは、”界の中のそこに魅力を感じるのわかります…!”と共感したりとか、
”そんな素敵な作品があるのか…”と新しい世界を知ったりとかで、斉藤さんに惹かれていた。
発信されているものが期待を裏切らない、というか。
特に『西瓜糖の日々』なんて、本当に自分がこれまで小説に抱いていた世界観が変わるくらい面白かった。小説にも、文章にも、表現にも、色々な形がある、と思えた。
そして次第に、「”自分が好きな位置はこのあたり”と示す姿が、これほどにかっこいいなんて」と思うようになってきた。
そして、他の人と「ここがいいよね」を共有するよさの手ざわりを、改めて確かめた。
だから自分も少しやってみようかなと思ったのが、たぶん一番原動力になった。
12月にリリースされた、斉藤さんの2ndフルアルバム「in bloom」。
今のところ、「いさな」が一番好きだ。視聴動画の段階からひとめぼれした。
奇しくも、私の大好きなものがいっぱい詰まっていた。
寛骨を残してもはや歩くことのないクジラ、海の音、生命賛歌、壮大な物語
そして「まほろば」まで歌詞に入ってるとあっては、射止められないわけないんだよね!
まほろばを求め 産声をあげた
斉藤壮馬「いさな」
最後はささやかな?ファンレターになりました。
2020は異質な年でした。それによって失われたもの、得たもの…。
多くの方が2021にin bloomでいられることを願って、2020にはバイバイです。